ごあいさつ

アート・ブリッヂ1301実行委員会

委員長 高本敦基

2014年の夏から秋にかけて、岡山県北部の美作地域で5人のアーティストによる滞在制作と15箇所でのアートイベントが様々に繰り広げられた「アート・ブリッヂ1301」は、2013年に開催された美作国建国1300年記念事業の熱気を引き継ぎ、次の一歩として新たな展開を記すためのプロジェクトとして行われた。

真庭市勝山では勝部梓が真庭の木「ひのき」を使い、勝山の野山を歩いてインスピレーションを得た木彫作品を町並み保存地区の空き家をアトリエに制作した。地域の人々に見守られながらの制作でモティべーションが高まったと聞く。久世では、平井優子が「MA庭=空間」をコンセプトに、真庭で収集した素材をもとに制作したダンスを、架空の「庭」を舞台に披露した。重要文化財である旧遷喬尋常小学校講堂などが会場となった。鏡野町奥津では、大谷俊一が奥津温泉街を中心とした地域の歴史や文化を尋ね歩き、地域の埋もれた特質を物語る場所を探り当てて新たに「ヲクツポイント」として提示した作品は、その場所から異なった見方や動きが生まれることを期待させた。美作市梶並では、滝沢達史が地域の伝統文化と融合した新たな表現として古民家を使ったインスタレーション作品を制作した。会場となった空き家は地域のNPOなどと協力して改修し、「山村茶屋」を展示に併せてオープンした。勝央町勝間田では、岡部玄が旧出雲街道の勝間田宿の町並みで、流木を使った巨大なオブジェなどを公開制作したほか、明治期の建物である旧勝央町郷土美術館での個展など様々な催しを展開した。街道祭などと連動した企画として多くの来場者を惹きつけた。5人のアーティストは、地域と深く関わる中で滞在制作を行い、アートの力でそれぞれ地域の魅力を引き出すことに成功できたと思う。

また、事業の一環として美作地域の各所で数多くのアートイベントが展開された。その密度のある多様性は、美作各地に豊かな自然や独自の歴史に裏打ちされた文化が連綿と受け継がれている証といえる。その中には、アーティスト・イン・レジデンスと連動するかたちで地域の人々が立ち上げた事業があり、各地を結ぶ交流事業も企画された。

今回の地域とアートを繋いだ「アート・ブリッヂ1301」は、100の事業と10万人近くの来場者を数える盛り上がりを見せ、美作各地に新たな文化を育むための一つの契機となる意味のある試みだった。美作地域の次の百年も幸先のよいスタートが切れたのではないかと思う。

最後に、本事業の開催にご尽力いただいた多くの方々に心より御礼を申し上げたい。

アート・ブリッヂ1301記録集 ART BRIDGE 1301 Archives

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アート・ブリッヂ1301

主催:岡山県、アート・ブリッヂ1301実行委員会 共催:真庭市文化芸術祭実行委員会

レジデンス事業共催:真庭市、真庭市教育委員会、鏡野町、鏡野町教育委員会、美作市、美作市教育委員会、

   勝央町、勝央町教育委員会

後援:山陽新聞社、朝日新聞岡山総局、毎日新聞岡山支局、読売新聞岡山支局、NHK岡山放送局、RSK山陽放送、

   KSB瀬戸内海放送、OHK岡山放送、RNC西日本放送、TSCテレビせとうち、エフエム岡山、テレビ津山、

   津山朝日新聞社、真庭タイムス

協力:開催地市町・市町教育委員会、おかやま県民文化祭実行委員会、NPO法人勝山・町並み委員会、作楽企画、

   (公財)真庭エスパス文化振興財団、十字屋迎賓館、岡野屋旅館プロジェクト、奥津温泉花美人の里、

   かがみのツーリズム研究会、山村エンタープライズ、アットタウン編集室・美作カルチャーカレッジ

助成:(公財)福武教育文化振興財団